ochang1977の日記

現在都内でデザイン関係の仕事をしています。昨年秋まで約5年間台湾で生活していた関係で、ブログの日記も台湾で経験したことなどがメインテーマになるかもしれませんがどうぞよろしくお願いします。

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オルファクトグラム

これまで読んだ本は累計何冊ぐらいになるだろうか?一時期は本当に狂ったように読書(といっても殆どミステリーだが)に明け暮れており、読みすぎて暫く時間が経つと内容をいとも簡単に忘れてしまう状況が続いていた。

そんな中で読後いつまで経っても妙に記憶に残っている本がある。それが井上夢人の「オルファクトグラム」。もともと徳山諄一と本名の井上泉でコンビを組み岡嶋二人ペンネームで発表された「99%の誘拐」という作品から岡嶋二人の作品を読み始めたのがきっかけ。その後井上泉がソロで井上夢人の名前で発表した数々の作品を読み、そして本作「オルファクトグラム」を知ることになったのだ。

この作品は過去には映画化もされ井上作品では比較的有名なものである。文庫版だと上下巻で各巻とも結構なボリュームだが、読み始めると続きが気になり一気に読破してしまった覚えがある。後で知ったのだが、「このミステリーがすごい!」の2001年版第4位に輝き、2002年2月にはWOWWOWでドラマ化された本作が放送されたらしい。

 

このミステリーのポイントは嗅覚。
ある日姉の自宅を訪れた主人公は姉の部屋のドアを開けた瞬間、ベッドに縛り付けられた姉の姿を目にしてしまう、と同時に何者かに背後から殴られ意識を失ってしまう。そして一か月間意識不明の状態から目が覚めた時に主人公は姉の死を知らされてしまう。姉は主人公を背後から襲った犯人に殺害されてしまったのである。犯人はその後も姉と同じ手口で次々と殺人を犯す連続殺人鬼だったのだ。

背後から強打された影響で匂いが分からなくなった主人公、だがそれと引き換えに匂いが視覚で感じられるという不思議な能力を有することに。世にあふれるものの匂いが眼前にいろんな色・形であらわれてくる不思議な感覚、それぞれの匂いがそれぞれ独特の色、形状を持ち、これにより主人公は匂いを視覚で判断できるようになるのだ。文中では主人公が3Dソフトで実際に匂いを視覚化してみたり、アルバイト先の料理屋のレシピを瞬時に再現してみたりと、現実世界では起こり得ないが、こういった文中の描写が作品に深みを増しながら、読者を次のシーンへと引き込んでいく。そして主人公はこの特殊な能力を武器に姉を殺害した犯人を追い詰めていく。

様々な色・形であらわれる匂いから遂に犯人を特定することになる主人公。嗅覚ミステリーともいうべき他に類を見ない独特の手法で井上ワールドが展開される。ミステリー好きで未読の方にはぜひとも一読してほしい作品だ。